赤く問い黒く答える
或る二人の日常。
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帰路の話
日差しがすっかり暖かくなった頃
赤頭巾は、まるで12時の鐘の音を聞いたシンデレラのようにスカートを持ち上げながら忙しく走っていた。
4月。ええ、多分。そろそろ4月でしょう。そんな時期に旅先から戻ってきた。何せ赤頭巾には暦など意味がないものであるから、所持などしていない。大体感覚で月を知る。

赤頭巾が遅れた理由がある。気候が、今年はいつもの年に比べて変だったのだ。寒かったり暖かったりとしているものだから、てんで季節を読めなかった。衰えたものだ。植物を見て判断しようとしたが、植物も同じ影響を受けていたのか、てんで参考になどなりはしなかった。


そんな中の、これは帰り道の途中、ちゃんとした月日を知りたかった数日前の話だ。

「もし。そこの方。」
森の中、左手には兎、右手には斧を持つ女性と出会った。髪は派手な桃色をしていた。彼女は気配などこれっぽっちも消していなかった。よく、狩りが出来るものだ。
そんなことより、この人ならば、今、何月で何日なのか知っていそうだ、と思い声をかけた。

『はいよーぅ。なんだい。スッゴイ格好ね。灰色の肌?ヒューゥ!イカス!』
「はい。私めは赤頭巾と呼ばれております。失礼ながらお聞きしたい事が。」
『はいはい、私は仕立て屋と呼ばれているわ。なにかしらー。』
仕立て屋と名乗った女は斧と兎をブラブラとさせながら、出会いに対し、楽しそうに会話を弾ませた。

「今は、何月何日なのでしょう。」
『4月の3日ね!』
「まあ…。ではすっかり過ぎていますね。戻らなくては。有難う御座います。」
『何ー?エイプリルフールは過ぎてるわよ。』
「ええ。そういうわけではないのです。4月に、戻る場所があったのです。」
『なるほどねー。ところでさ、あんたどういうRPしてんの?男?女?あー、男か。』

突然の話題の変化よりも、男かと言われた部分に耳を疑う。
「まあ。よくお判りに。」
『あはっ、自宅行ったしね!』
よく、わからない人だ。いつ、自分は住所を言っただろう。いつ、話が居候先へと行ったのだ。そういう能力があるのかもしれない。

「透視や追跡のような、特殊な能力をお持ちなのですか。」
『ええー!ないよぅー!自宅に行くことなんて、皆知ってることじゃん!?あ、あー。そうかRPに反するか。』
「…? RPとは何でしょう。」
『ええ!?初心者ー?君。RPってのは、ロールプレイング。なりきりって事よ。』
「ほう。それで、この赤頭巾めのRPはどんなものかと先ほど聞かれましたが、よく、意味が判りません。」
『君の存在自体がRPでしょ!ねー、それより設定聞かせてよ。どんなのか!超気になる外見なんだけど!』

まるで、本の登場人物について詳細を知りたいかのように彼女は目を光らせながら近づいてきた。

「よく、判りません。」
『あーー。君もそうなの!?ま!いいんだけどねー!HPとかある?顔絵自作?』
「…。顔絵…。ああ…。赤頭巾めの部屋に飾ってある、肖像画は…知人に描いて頂いたものですが…。ご存知なので?…HP…?」
『あはは!しらばっくれー!』

つい、仕立て屋から後ずさりをする。直感だ。危険人物に近い。自分の、元々無いような表情が固まっていくのが判る。そんな様子を彼女は悟ったかのように、一歩一歩近づいてくる。そんな彼女から、一歩一歩下がる。

『この出会いは偶然?とんでもない。必然よ。』
一歩下がり、一歩前へ。
『背後、どんな人?学生?社会人?男?女?』
「背後に人などおりません。」
一歩下がり、一歩前へ。
『あはは、だよね。いないよね!うん。わかってるけど!』

『居るんだよ。』

仕立て屋を背にし、走り出す。変身するか?いや、変身中に確実に追いつかれる。だが、足には自身がある。彼女の細い体なのに、大きな斧を持っていた。それを持ちながら自分に追いつく足は多分、ないはずだ。いや、無理なはずだ。
森を抜け、草原に出る。更に足を速める、が。

『あーん、ごめんね。私、足速い設定なんだー。』
「…!!」
すぐ、追いつかれた。いや、追い越され、道を塞がれた。

『ありえなーい!って思ったでしょ。でしょー!でも、こういうのが出来る世界なの。自分で好きに作れるからね。今から翼つける事だって出来るし、髪の毛一気に伸ばせるし、お洋服もパパっと変えられちゃう!』
彼女は両腕を広げて自慢気というよりは、大げさに話し出す。なんという不思議で便利な能力。
「仕立て屋…と呼ばれる貴女は創造神か何かなのでしょうか。」
『違うわ。言うなら創造神は私の背後さん!』
「背後…。」
『そうよ。君にも背後がいるはずなの。でね、その背後さんが考えたのが君!能力も制限されているのは君の背後さんの好みよ。ううん、外見から性格から全ー部!』
「…。」

『外見だけじゃないわ。行動も、全部、仕組まれてることよ。』

草原の草が揺れる。


『どう?いい時に風が吹くでしょ?これも背後さんの計らい。』

普段、出ぬ 汗が出る。

『自分が操り人形だってこと知って吃驚?あ、私は違うわ。知ってるからね。ってゆーか一身胴体?』




『…何故、皆知っているのに知らないのかしら。変な世界よね。ここ。』





彼女は歯を出してニッコリ笑った後、まるで今までの会話がなかったかのように話し出した。
『もう四月よ。行かなくていいの?道は知ってるはずよね。そのうち遊びに行くわ。君のこと、気にいっちゃった!じゃ、またねーん!』
仕立て屋は、まさに仕立てた竜巻と共に姿を消した。




日差しがすっかり暖かくなった頃
赤頭巾は、まるで12時の鐘の音を聞いたシンデレラのようにスカートを持ち上げながら忙しく走っていた。
4月。ええ、もう4月です。早く戻らなくては。

あの日の出会いなど、すべて忘れてしまおう、と言わんばかりに、赤頭巾は帰路を急いだ。
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今だ未定
黒頭巾は既にテントを畳んだ。
それは冬にしてはあまりにも暖かい1月中に。

「じゃあ、ま、俺は先に行ってるからな。」

「ええ。」

赤頭巾は同居人のいる家に戻る。


さて…、どうしたものか。
長旅になりそうな気もしないでもない。
冬眠するには…少々出だしが遅い。

「そうですね。まずはあちらに向かわなくては。」

ふと思いついたかのように、そのまま部屋を後にする。

部屋の荷物はそのままだ。しっとりとした生活感が伺える。
まるで、ちょくちょく帰ってきていそうな、そんな状態のまま、赤頭巾は同居人のいる家から姿を消した。

うっかりしたなと思ったのは三月に入ってからだ。
ついつい、何も考えずに出てしまって大分経つ。


「暦でいう、4月という時期が一番帰りやすいようだ。」
黒頭巾が本のような束に目を通す。
数字が書いてあり、上から順番に、数字の上に爪で痕がつけられている。
「あちらを出てから何回夜が来たでしょう。」
「すっかり忘れたが、60回は確実だろう。」
「まあ、そうですか。」


そろそろ戻らなくては。

「なかなか、帰る場所があるっていうのも大変だな。」
黒頭巾が軽く笑っている。




「おや、いつだって僕の帰る場所は貴方ですよ。」


「そうだな、いつも俺は待ってばっかりだ。」


それでは、と赤頭巾は籠を持った。
「気をつけてな。オオカミには気をつけるんだぞ。」
黒頭巾が似合わず手を振る。
「ええ、充分気をつけます。」
赤頭巾は丁寧にお辞儀をすると、いってきます。と西へ向かった。
姿かたち
『しかし、何だ。頭巾を脱ぐとその口調になるのは仕様なのか。』

「仕様だなんて。この姿で女の言葉を喋られてご覧よ。どう思う。」

『…。』

「…。」

『まあ、それも有りだな。』

「そう、言うとは思っていましたよ。」

『あんま、変化ねぇしな。』

「そうとも。」

『ところで、あの本見つかったのか。』

「勿論です。しかし…僕が前に持ち帰っていたなんて。」

『鍋しきが無い って持っていったんだろ。』

「ああ、思い出しました。」




『外は雪か。』

「ええ。」

『気をつけて行くんだな。』

「ええ。」

「…ところで、赤頭巾の姿とこのタキシード姿、どちらが僕に似合ってると思います?」

『…。』

『毛皮。』

「あはっ!」



「…おかしいな…。本を片付けたはずなのに、本が一冊見当たらない…。」



『ん…?本に薄い本が挟まってるな…。』

(            )

『…。ま…。そのうち青ざめて取りに来るだろ…。』
着物
記入者:赤頭巾


昨晩の出来事について。




『赤頭巾サン!オワー!!今日は着物なンだねーっ!!』

「はい。仕立てて頂きました。」

『OKOK、ベリベリ可愛い。』

「まあ。」

『しかし、なんてーの。赤頭巾サンはやっぱり何か被ってないと。』

「そうですか?」

『マジで。OK。仕立て屋サンが帽子をあげるよ。ホイ!(フリフリの帽子を無理やり被せる)』

『うし。これでこそ赤頭巾さん。』

「有難う御座います。」

『ゴスロリータ赤頭巾大魔王。』

「意味不明ですね。」

『着物の話題そっちのけになってるしね☆★☆』

「本当ですね。」

『赤頭巾さん、今、「こんな帽子被ったら巷で人気の和風、着物メイドになってしまいますね…。」とか思ってるでしょ』

「思っておりませんよ。」

『マジで』

「ええ、本当です。」

『OKOK、まあ、明日いいもんあげるよ。』

「まあ、何でしょう。」

『ついてからのお楽しみィ!』

「それでは楽しみにしております。」

『ンジャマ、今日はこれにて!おやすもーーーーー』

「ご機嫌よう、お休みなさいませ。」
年明け
記入者:赤頭巾

「明けましておめでとう御座います。」

昨日と一緒の、しかし、確実に違う今日が始まる。
それはいつものことだ。

「本年も宜しくお願い致します。」


季節で一年を数えていた赤頭巾にとって、太陽暦での一年は新鮮であった。
それまで赤頭巾の一年のスタートは春。生物が息吹く頃。
花が咲き、冬眠していた動物達が動き出す、そんな時期。
何故か?わかりやすいからだ。


「何故このような、冬の真っ只中、知らせも無いような時期に、一年という区切りをつけたのでしょう。」

赤頭巾は、黒頭巾に熱燗を出しながら呟いた。
黒頭巾は、それには答えず、熱燗を飲みながら一言だけ言った。
「苦い。」

また、明日がくる。今日と一緒の、しかし確実に違う明日が。
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